リートデュオ ファーヴル&加藤
ラファエル・ファーヴル、テノール
加藤哲子、ピアノ
~民謡から生まれた新しい歌曲の旅~
リートデュオ「ファーヴル&加藤」は、2011年より精力的に演奏活動を開始し、音楽フェスティヴァルやコンサートシリーズで定期的に歌曲リサイタルを行う他、スイス国営ラジオ番組出演にも出演しています。
主にロマン派から現代のドイツ歌曲をレパートリーもちますが、13カ国の民謡をルーツとする歌曲を集め「ルーツをたどって ~民謡から生まれた新しい歌曲の旅~」を発表中。日本では、東京都北区文化振興財団主催の北とぴあ国際音楽祭で演奏しました。このプログラムは、CD 「Folksong Arrangements for Voice & Piano 」として、スイス音楽新聞で大変高く評価されています。
令和元年(第74回)文化庁芸術祭参加レコード部門
CD ラファエル・ファーヴル&加藤哲子「Folksong Arrangements for Voice &Piano」
モーリス・ラヴェル『民謡集』より
スコットランドの歌、フランスの歌、スペインの歌、イタリアの歌、ヘブライの歌
ベンジャミン・ブリテン 『フォークソング・アレンジメント』第3巻「イギリス」
ヨハネス・ブラームス 『ドイツ民謡集』 第1巻、第2巻、第4巻、第6巻より抜粋
アントン・ドヴォルザーク『民謡風の調べで』チェコ民謡
テオドール・アドルノ『七つのフランス民謡によるアレンジメント』
カール・シマノフスキー『クルピー地方の民謡』より
エドヴァルド・グリーグ 『スロッター』(田舎の踊り)より
間宮芳生『山形民謡集』より「とのさ」
ベラ・バルトーク『ハンガリー民謡』
CD「フランツ・シューベルト 歌曲」
心の奥にある感情とむきあって
私達にとってシューベルトの歌曲の魅力は、自己の感情と向き合う純粋さである。それは自然と自己への結びつきや、愛情、与えられない境遇への憧れで、現代を生きる私達にも共感できる、普遍の情感である。シンプルにして、人生の本質を言い尽くせるシューベルトの歌曲は美しさだけを持たない。ぞっとするような人間の感情もとらえている。彼は人生、感情を真実としてとらえ、まっすぐに音楽に向けている。それ故、彼の音楽は私たちの心に響き、感動する。
このシューベルト歌曲のCDは、『愛』『夜』『憧れ』の3つのテーマから選曲した。
『愛』に選んだ歌曲「愛の使い」「ガニュメード」「ミューズの子」は、希望に満ちた愛を生き生きとした美しい自然と共に描いている。「愛の使い」では、小河に自分の愛の思いをたくす詩人の心の内をデリケートに描いている。
『夜』のテーマの中では4つの歌曲が含まれている。「さすらい人」と「秋の月夜によせて」は澄んだ月夜のシーンである。孤独な一人の人間として、人生への思いやを月夜によせて、人生を受け入れ和解した気持ちでいる主人公の思いが描かれている。「小人」では、愛から生まれた狂気、嫉妬が最大に達し、恋した王女を殺し、海に沈めるという一夜を描いている。「冬の夕べ」は人生に満足した静かな深い喜びが描かれている。
『憧れ』では、シューベルトの場合、得る事のできない愛や人生の境遇は幸せや安らぎをいつも追い求めるという事になり、人生に深く刻まれる。一見楽しそうに聴こえる「鳩の便り」は、実は悲惨な人生の境遇から生まれたものもありで、心の奥にある『憧れ』がせつなに現されているのである。当時シューベンルとは死を前にし、貧困と病気の状態であった。「ブルックにて」では早死にした恋人への苦悩を生涯乗り越えれなかった詩人の実情が、歌詞の背景になっている。一切の安らぎがないように作曲されている。シューベルトは、現実とは全く違う境地を想像して、その憧れの心境をまっすぐに描いている。 「流れの上」ではシューベルトの唯一、ホルン付きの歌曲で、心痛の思いでの別れの人生の境遇を歌っている。
最後に技術を超え、情熱と愛情をもってCD制作に取りかかった録音技師のルドルフ・ベックと音楽監督のアンドレアス・グローテンスに感謝を申し上げる。 録音場所は温かい響きを持ちったスイス・サルネン市の以前教会であった所で、ピアノは古いベーゼンドルファーである。
聴講の際にシューベルトの心の奥の思いが届けばどんなに幸いに思う。
2015年秋
ラファエル・ファーヴル、加藤哲子
* ルーカス・クリスティナート, ホルン
℗ 2015 SARU international music [50:00]